1872年東京 日本橋
1933年東京 日本橋
1946年東京 日本橋
2017年東京 日本橋
1872年8月〜10月北京 前門
現在北京 前門
1949年前後北京 前門
1930年代北京 前門
1895年台北 衡陽路
1930年代台北 衡陽路
1960年代台北 衡陽路
現在台北 衡陽路
1904年ソウル 南大門
2006年ソウル 南大門
1950年ソウル 南大門
1940年代初ソウル 南大門
新領域プロジェクト、和解学の創成プロジェクトは、「和解三原則を再度検討する――和解学の方向性について」と題した研究会を、総括班イベントとして新井立志先生をお呼びして開催いたします。紛争解決学の知見を、いかに東アジアの国民という不特定の匿名集団間の和解に活かし得るのか。議論したいと思います。一般の参加も歓迎です。是非、この機会にご参加ください。
【日時・会場】 11月19日(月)/ 18:20-20:20 早稲田キャンパス14号館960号室
【講演者】新井立志(米国国際トレーニング大学・教授)
【タイトル】「和解三原則を再度検討する――和解学の方向性について」
【参 加】 無料、どなたでも参加できます。
【言 語】 日本語
【申し込み先】 Wakai960@hotmail.com
講演会終了後に懇親会を行う予定です。参加予定の方は、ご一報いただけますと幸いです。
新井立志先生は、現在、米国際トレーニング大学に所属しており、ルワンダ国立大学法学部講師・国連機関のコンサルタントを歴任しています。
NGOアドバイザーとしてアジア、アフリカ、中東、北米で紛争解決の実践活動に取り組みながら、主として平和構築・紛争解決学の研究に従事されてきました。
主要著書として、Creativity and Conflict Resolution :Alternative Pathways to Peace(Routledge,2009)、Contested Memories and Reconciliation Challenges: Japan and the Asia-Pacific on the 70th Anniversary of the End of World War II( co-editor/contributor, Wilson Center, 2015 )などがあります。
今回は、一年前2017年12月に早稲田大学に開催されました国際連携シンポジウムでの議論を踏まえ、その議論の続きを行ってまいります。ご参考までに、前回の総合討論のテキストを以下に添付します(この原稿全体は次回の「ワセダアジアレビュー」に掲載予定です)。
奮ってご参加ください。また、ご関心のある方々に情報を共有していただけますれば幸いです。
2018年11月14日
<以下、2017年12月に早稲田大学に開催された国際連携シンポジウム主要関連部分>
新井先生コメント:浅野先生がご指摘されている問題点を私なりに換言すれば、如何にリエントリー(re-entry)の過程が重要かということです。対話やトレーニング、セミナー等で啓発を受け、そこで学んだことを和解の現場に活かそうとしても、意見を異にする自集団のメンバーから非難を受け、和解の為に必要な行動がとれないことがあります。紛争解決の対話や交流を行う際に、このリエントリーの問題にどう対処するのかという課題は避けて通れないものです。そして、この問題については多くの研究がなされ対処法が提唱されています。例えば、和解の為の対話に参加した人たちがどのようなリエントリーの課題に直面することが想定され、その課題を乗り越える為に具体的にどう協力し合うべきなのか行動計画を練ることが重要であると指摘されています。
次にトラック2の活動を実践していく上で、どのようなモデルを念頭に置いて活動計画を立てていくかについて述べたいと思います。まず、一般に紛争を社会的システムとして捉え、そのシステムをどう平和的に変換していくかを考える上で役に立つ多次元外交(Multi-Track Diplomacy)という考え方を紹介したいと思います。多次元外交とは、政府だけでなく他の様々な団体やリーダーが国家間の関係を構築するために貢献できるという考え方です。例えば市民社会のリーダー同士の繋がり、ビジネス同士の繋がり、宗教指導者や団体同士の繋がり等によって、国家や国民同士の関係を対立から協調へと転換していくことが可能です。ちなみに多次元外交という考え方を1980年代に提唱し始めたのは政府間外交の限界を体験的に知悉していたアメリカの元外交官や政府高官でした。
ところで浅野先生が指摘される和解の難しさの背景にあるのは、別のモデルです(図示 ー3重層のピラミッドを二つ横に並べたもの)。ここでいう別のモデルとは、国家や国民社会の中にピラミッド構造があると仮定して、その構造の上を占めるものをトラック1、最下層を占める団体やリーダーをトラック3、その中間にあたる団体やリーダーをトラック2と想定するものです。日本の社会を例に取れば、トラック2にあたる団体は広範な地域に事業を展開する企業や企業連合、労働組合の全国組織、全国的なネットワークを持つメディア等が挙げられます。このピラミッドモデルをもとに多次元外交を考えた場合、対立する複数の国家や社会をトラック1,2,3の其々の次元で如何に結び合わせていくかが課題になります。特に大事なのはトラック1レベルでの外交が機能しない時に、トラック2や3のレベルでどう市民外交を展開し、紛争解決や和解を進めていくかという点です。
ここで特に注目して頂きたい多次元外交の方法としてミドルアウト方式というものがあります。ミドルアウト方式とは、ピラミッドの中間点、トラック2を基軸にして上下左右に影響力を駆使しする方法です。ピラミッドの中心点から幾重にも同心円を描き、蜘蛛の巣を張り巡らしたと仮定して頂きたいと思います。巣の中心に陣を取る蜘蛛は縦横無尽に移動して獲物を捕らえ、捕獲活動が終わればまた巣の中心に帰ります。これは大まかなイメージをつかんで頂くための比喩ですが、この比喩を通して申し上げたいのはトラック1(政府)にもトラック3(草の根)にも自在に働きかけることが出来るトラック2レベルの団体やリーダーの大切さです。また、こうした団体やリーダーが政治的な派閥やイデオロギー等に拘泥されることなく、いわば右にも左にも精力的に働きかけ、社会全体の結びつきを強めるならば、大きく紛争解決や和解に向けての貢献できるものと考えられます。また、ミドルアウト方式を応用して国家や社会の中で対話と社会変革を推進する力強い団体やリーダーが現れ、そうした団体やリーダー同士が国の壁を越えて協力し合う時、多次元外交はより重層的で継続的なものとなりえます。
浅野コメント(2018年現在から)
新井先生の言われた「ミドルアウト方式を応用して対立する人たちの信頼醸成を進め、内部的な和解を進めていく必要」と言う点について、和解学とどう関わるのかという点を中心に最後に追加のコメントをさせていただきたいです。和解に関心を持つ人と、持たない人だけの対立という構造が、新井先生の指摘くださった基本であったと思います。しかし、東アジアの状況は、いくつかの和解が存在し、その異なる和解に対応して、誰が国内的な政治的・文化的リーダーシップを握れるのかが変わってしまう状況が存在しています。それこそが、ナショナリズムが急速に人工的に作られてきた歴史を背景としているものです。現在の行き詰まりは、そのナショナリズムの土台となった伝統的な倫理や正義・道徳そのものが政治化され、国内政治過程にビルトイン・組み込まれてしまっている状況に他ならないと思います。
民族的正義なのか普遍的正義なのかについての論争に象徴されるように、外部から持ち込まれた普遍的正義が、実は民族的な正義としてしか機能しないがゆえに、国際紛争を加速させてしまうという状況を前に、紛争解決学を東アジアの状況に即した和解学へと進化させる必要を感じます。新井先生をご招聘申し上げて、さらに深く対話を続けたい所以です。